私の波乱万丈な中学・高校留学②

留学生活のはじまり
学校開始準備は大変

無事、The Athenian Schoolに合格。しかしビザの申請に時間がかかり、少し遅れて10月から留学生活がスタートとなりました。海外は初めてではありませんでしたが、一人での渡航、また長期での留学は初めてでとても緊張したことをよく覚えています。

学校に到着して、寮の部屋に入ると、部屋にはベッド、マットレス、枕、シーツだけ。当然、学校からの案内書類はすべて英語でしたので、自分で留学準備を進めていた私には、書類が理解できておらず、足りないものだらけでした。そんな私の姿を見かねた台湾からの留学生が、スクールバスで買い物に行けることなど親切に教えてくれましたが、初めての経験で、何からどう揃えたらいいのかも分からず、困り果ててしまいました。幸い、寮母さんが買い物に連れて行って下さり、必要なものをそろえることができ、周囲の助けを借りて生活環境を整えることができました。

 
(参照:The Athenian School  https://www.athenian.org/)

日本と180度異なる
北米の授業スタイル

到着翌日にオリエンテーションを受け、クラススケジュールを決めました。遅れて入学した為、他に日本人もおらず、英語力が十分でなかった私は、よく分からないまま時間だけがどんどん過ぎていくことに、最初は不安になり、泣きそうになったことを覚えています。日本とは全く違う授業スタイルに最初は戸惑いもありましたが、学校生活を通していろいろなことを学び、日本との違いについて考えるよい機会となりました。

ドラマ「ビバリー・ヒルズ青春白書」を観たことはありますか?日本の高校生活と全然違う生活に憧れた方もいらっしゃるかもしれません。日本で授業というと、一人ひとり決められた席があって、先生が教壇で授業をするのを全員が正面を向いて受けるスタイルを多くの人が想像するのではないでしょうか。決められた時間割があり、朝から夕方まで全員同じスケジュール通りに動いていきます。一方で北米の場合、高校の授業は日本の大学のようなスタイルです。取得した単位で高校の卒業が決まり、科目の選択も自分で行うので、一人ひとり全く違う時間割が出来上がります。自分で決めた時間割に沿って、その授業の先生のクラスに移動して授業を受けます。留学生の場合、英語力のない学生は難しい科目はESLの付いた授業からスタートし、慣れてきたら現地の学生と同じ授業を取っていきます。アジア人の学生は数学が得意な人が多く、私も入学当初から数学は高校2年生レベルのクラスを受けていました。

席の座り方も日本とは違っていて、決まった席はありません。また、日本の授業は「静かに聞く」のが当たり前ですが、北米ではディベートやディスカッション、発言するのが当り前で、先生と生徒の対話を大切にし、生徒に「考えること」と「自分の考えを自分の言葉で相手に伝えること」を重視する授業スタイルです。

さらに、日本で校則の厳しい学校では学校にお菓子を持ってくるのも禁止、というところもありますが、北米では授業中にスナック等を食べている生徒もおり、先生が注意することもありません。それは決してマナーが悪いのではなく、形にこだわる授業ではなく、教育本来の目的を重視している授業スタイルだからです。
日本の教育はマナーや常識、規則正しさなどを身につける、日本の教育の良さがあると思いますが、「先生の言ったこと守る」ことが大切で、「なぜ」や「何のために」といったことを考える機会がありません。一方で、北米の教育は、先ほどお話しした授業スタイルにも表れているように、「押さえつけない教育」、「間違ってもいいから自分で相手に伝える」方法で、生徒が自由に表現や主張し、一人ひとりの個性を引き出す教育です。

昨今はインターネットで世界中の情報が手に入るようになりましたが、それに伴い日本の学校システムに疑問を持つ親や子供が増えてきたように感じます。「なぜ」を考えずに言われたことをそのままやってしまい、失敗したときの理由も「言われたから」という言葉を耳にすることがあります。これからどんどんグローバル化が進んでいく中で、本来の目的を考え、疑問を持ち行動していく力はとても大切な要素だと私は考えます。

自立心を育む寮生活

“寮生活”と聞くと厳しい規則があるイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。確かに外出するには許可が必要ですし、起床時間や食事の時間、スタディアワー等、時間も決められています。しかし、それは生徒の安全を守るための外出許可であり、時間の決まりは、集団生活を送るためのルールです。また、寮生活では、夜中まで友達とおしゃべりをしたり、夜遅くまで勉強して夜食を食べたり、ベッドの中で勉強して寝落ちしてしまい、シーツや布団がペンの跡だらけになったり、年の近い学生と過ごすことも楽しく、寮生活を通して、自立心や自主性、チームワークやコミュニケーション力が身についていきます。

さらに、親との電話や荷物が時々届くのも、親元を離れて暮らす楽しみのひとつです。私の場合、当時両親は離婚、父は仕事で忙しかったため、電話は2週間に1回程度と他の生徒と比べると少なめでした。やっと電話が通じても思春期の娘と父親ではなかなか話す内容もありませんでしたので、すぐに会話は終わってしまい、少し寂しさを感じたこともありました。

しかし、今私自身も二人の子供の親となり、当時を振り返ってみると、子供の自立を考え、子離れ・親離れをすることも重要なのだと思います。中高生など小さい時から留学させることに対して、賛否両論あるかもしれません。親元で育つことで得られることも、留学で得られる自立心や自主性もどちらも子供の成長には必要だと思います。「留学はいつからするのがいいのか」とよくご質問頂きます。人それぞれの考え方はあるかと思いますが、私自身の経験を振り返ると、自分で朝起きたり、洗濯したり、一見当たり前のことのように思いますが、自分で出来るようになることや、集団生活の中で身に付くコミュニケーション力やチームワークは、社会に出たときの自信に繋がったと思います。

 
(参照:The Athenian School  https://www.athenian.org/ )

The Athenian Schoolに通う生徒

The Athenian Schoolは当時カリフォルニア州でアメリカのボーディングスクールではTop10に入るレベルの学校で、高級住宅地にあり、学校は国立公園の中にありました。その為通う生徒の家庭環境はさまざまでした。約6割の生徒はアメリカでも中流以上の家庭で、中にはアメリカの大手フラワーチェーンの子供、ナパにあるワイナリー経営者の子供、シンガポールの国王の親戚の子供、ソウルで一番のお金持ち、台湾の有名銀行頭取の息子、蒋介石の曾孫、アメリカの有名作家の息子など、育ちや環境が上流のお子さんもたくさんいました。残りの4割は一般家庭や奨学金をもらいながら通う生徒でした。通う学校によって出会う友達、学習環境、生活環境は変わり、それらは人を大きく変えます。これから留学を考えているお子様、親御様は、もちろん与えられた環境も大切ですが、お子様自分自身での環境づくりも大切なことをよく考えて頂きたいと思います。いくら学校環境が良くても、いつも日本人のお友達と日本語で話していては、英語は上達しません。自分から他国籍のクラスメイトと関り、ネットワークを作り上げ、お互いに刺激し合って成長していくことが大切だと思います。

次のブログでは、高校留学生活の続きをお話ししていきます。

プロフィール
カナダ・バンクーバーで留学会社を経営しながら、
4歳と4カ月の2人の子育てをする母親です。中国人の母と日本人の父の間に生まれ、日本語、中国、そして英語のトリリンガル。中学2年生の時にアメリカに留学し、そのままアメリカで大学進学、就職しました。アメリカ留学での経験、海外での子育ての楽しいエピソードや困ったこと、日本との違いなど、現在私が経験していることもお伝えします。

Picture of kunh