アメリカでの就職②

就職のチャンス

日本では、まだまだ年齢や性別で、こうしないといけない、というような周りからのプレッシャーを感じることがよくあります。特に女性であれば、学歴や結婚などに対して、何かしら感じたことがある方も多いのではないでしょうか?私の場合、アジア人の父からの言葉や考えの影響が強く、仕事選びにおいても当初自分の考えていたようにはいきませんでした。

オファーを受けた企業の中でも、“形”にとらわれない、その働き方や環境に大変惹かれた企業がありました。当時出来たばかりのGoogleは、今のようなネット社会ではありませんでしたので、まだまだ知名度も低い状況でしたが、宣伝・マーケティング職で、中国に進出するアドワーズの部署の求人がありました。中国語、日本語、英語を話せる自分にはピッタリだと思い、面接を受けました。さまざまな業界の面接を受けましたが、Googleの面接は、面接官はスニーカーにジーンズ、Tシャツで、学生のように若い人でした。社内には卓球台や保育園、プレイグラウンド、瞑想する部屋(天井のデザインを変えられる)等があり、他の企業と社内の雰囲気も働き方も全く異なっていました。今でこそ日本の企業でも取り入れられていますが、今から20年近く前に、働きやすい環境づくり、特に女性社員を大切にする働き方等、“形”にこだわらない仕事のスタイルを取り入れていた若い企業は、とても新鮮に感じました。IT業界でいうと、他にも現在はYahooの傘下に入っているオバチャーでも同じくマーケティング部署から採用を頂きましたが、父に相談すると、「将来家業に繋がるような、貿易、金融を目指した方がいいのでは」といわれてしまい、お断りしました。当時、これからスタートするIT業界は、経験重視の他の企業とは違い、新卒のポテンシャルに目を光らせていました。また、若い企業は型にはまった会社ではない為、可能性を試すチャンスがありました。

その他にも、日本とは違い、面接の段階で社風を感じられるような体験もありました。キリンビールUSAの面接を受けに行った際に、社員の方々にランチに誘われました。一緒に食事やお酒を飲みながらコミュニケーションを取ることで、その企業の雰囲気やお互いのことをよく知ることができた経験でした。何を思ったか、キリンビールの社員と一緒にいるのにアサヒビールを頼み、社員のみなさんの笑いもしっかり頂きました(笑)。

また、3か国語を話せることや私のバックグラウンド見て、国連からもオファーを頂きましたが、秘書的な仕事でしたので、自分には合わないと思い、お断りをしました。他にも会計会社や投資会社への就職も悩みましたが、やはり自分には硬い仕事よりも、のびのび働ける場所が良いと考え、オファーをお断りました。

「こうあるべき」という形にこだわりを持つアジアの文化に対し、北米はもっと自由で、仕事においてもその人の個性や考えを見て、評価してくれるように思いました。

就職先の選択

貿易会社を営む父は、私に将来的に家業を継ぐ為に、その勉強ができるような会社に勤めてほしいと考えていました。そんな父からの想いも感じていた私が最終的に選んだのは、肌着やベッティングの輸入業務を行う日系企業(帝人が投資した企業)でした。ロサンゼルスに子会社を立ち上げる為に人を募集しており、そこからのオファーを受けることになりました。

面接を受けた当初、会社の立ち上げはこれからと、いうところで、面接はホテルのミーティングルームで実施、お給料も安く、またオフィスすらまだないこの会社に対して不安に思いました、なんとか断るために、「父も不安に思っているので」と親を理由に一度断りました。親を理由にしたのは、「社会人にもなって親が出てくるなんて」と面倒くさいと感じて諦めると思ったからです。しかし、その企業の社長から、父と話をさせてほしいと言われ、数日後、本当に父の会社宛に部長様から電話がありました。父からは「完璧な会社はないし、立ち上げは大変だと思うが、いろいろな勉強ができると思う」と背中を押されました。父は、将来私に家業を継いでほしいという思いもあり、他の会社で一から鍛えてもらえるのは良いチャンスだと思ったようでした。その後、再度その会社から電話があり、悩んだ末、父からの後押しもあり、そこに就職することを決めました。

アジアの家庭はまだまだ親の意見は強く、子供への影響は良くも悪くも大きいです。しかし、子供の意見も尊重して、それで失敗しながらも成長していくことを見守ることも大切なのではないでしょうか?もちろん、どう考えても間違った方向に進みそうなときは手を引っ張ることも必要ですが、親に引かれた道を進み続けていると、何か失敗したときにも「仕方ない、親の言う通りしただけ」と責任を親に押し付けることにもなりかねません。自分の選択や行動に責任を持てるように、子供に考えさせることが重要だと私は思います。

次回はアメリカでの会社の立ち上げについてお話します。

プロフィール
カナダ・バンクーバーで留学会社を経営しながら、
4歳と4カ月の2人の子育てをする母親です。中国人の母と日本人の父の間に生まれ、日本語、中国、そして英語のトリリンガル。中学2年生の時にアメリカに留学し、そのままアメリカで大学進学、就職しました。アメリカ留学での経験、海外での子育ての楽しいエピソードや困ったこと、日本との違いなど、現在私が経験していることもお伝えします。

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