私の波乱万丈な中学・高校留学⑤

環境の変化と英語の上達

復学後、私の英語は劇的に上達していきました。その理由のひとつ目は、休学中のアメリカ シアトルでの半年間のホームステイです。周りに日本人や中国人がいなかったことで、英語の環境に慣れていきました。二つ目は、交友関係が広がったこともありますが、何よりアメリカ人の彼氏ができたことです。一緒に過ごす時間が長く、英語での会話はもちろん、感情を表現したりすることで、英語力がすごく伸びていきました。

また、入院生活等があり、他の生徒に後れをとっていたことから、Grade11の時に夏休み期間中に単位を取得するために、サマースクールに参加しました。北米の学生は、サマースクールに参加するのはごく一般的で、たくさんの学生が参加します。観光などのアクティビティも含めた、留学生向けのサマーキャンプも昨今人気ですが、私が参加したような、アカデミックなサマースクールには、北米の現地の学生はもちろん、既に北米で留学している学生も多く参加します。それは、夏休みに単位を取っておけば、大学進学の準備に使える時間が増えること、また留学生であれば、やはり普段のクラスについていくのも大変ですので、単位を夏休みに取っておくことで少し余裕ができます。または、学期中に落としてしまった単位を取りなおすことも可能です。さらに、在学している学校以外のサマースクールに参加することで、環境の違う学校の授業や生活を体験できるのも参加する魅力のひとつです。

私も、上記のような理由から、マサチューセッツ州にあるボーディングスクール、Northfield Mount Hermon Schoolのサマースクールに参加することを自分自身で決めました。こちらの学校は、当時アメリカでTop15に入るようなレベルの高い人気の学校で、サマースクールにも世界中から学生が参加していました。単位取得が目的でしたが、The Athenian Schoolと違う雰囲気の中、世界中から参加したレベルの高い学生と一緒に授業を受け、生活した時間は、刺激がいっぱいで、学ぶことや得ることがたくさんありました。 


The Athenian Schoolで培ったもの
自分の言葉で表現する力

私は小さいころから文章を書くのが得意でしたが、それは、子供のころ入院していた時に、母が毎日本を読んでくれたことが大きく関係しています。私は先天性心室中隔欠損症という心臓病で、生まれたときから心臓に穴が空いており、5歳の時に手術を受け、2年間入院生活を送りました。学校にも通えず、友達と遊ぶこともできなかった私の楽しみは、毎日母から本を読んでもらう時間でした。誕生日にはいつも新しい本を買ってもらうのがとても楽しみで、誕生日前になるといつもワクワクしていました。

そのような環境もあり、小学生の時から、中国にいたときでも、日本にいたときでも作文は得意で、先生方からの評価も高く、留学先のThe Athenian Schoolでもいつも先生方からAやAプラスの高評価を頂いていました。文章を書くのが苦手という学生のお話をよく聞きますが、まずは本をたくさん読むことが文章上達の為の秘訣のひとつです。

また、留学生は英語が上達して、ESLクラス(英語が第二言語の生徒向けの英語クラス)が終了した後、現地の学生と一緒に英語の授業(日本でいう国語)を取ります。その授業の中では、シェイクスピアやギャッツビー等さまざまな小説を読んでから映画を観て、ディスカッションをしました。小説を読んでから映画を観ると、そのギャップに衝撃を受けました。映画は誰にでも伝わるように作られているため、何も考えずとも話が進んでいきますが、一方で小説は、絵がない分、文章からその場面や次起こることを自分で想像します。次に何が起こるのか考え、イメージすることがとても大切で、一人ひとり感じ方やとらえ方は異なりますので、ディスカッションをして、他の学生の意見を聞き、自分の意見を共有することを行いました。「1+1=2」という正解がひとつしかない授業スタイルではなく、「考えること」や「想像すること」が目的の、正解、不正解はない授業スタイルでした。

さらに、高校の授業では作文を書くことが多かったのですが、トピックの中にはアジア圏ではタブーとされていて、授業では話題に出したりしないようなものもありました。そのひとつを例にあげますと、性教育の授業で「性を売ること」について作文を書いたことです。作文といっても、ただ感想を書くのではなく、私はそれを一つの職業として捉え、彼女たちが社会に貢献していることや彼女たちの存在で性犯罪の抑止につながること、また、その仕事をせざる得ない環境等について、さまざまなエビデンスを用いて、自分の主張を書きました。その意見が正しいか正しくないか、ということではなく、「自分の主張をエビデンスやバックアップを付けて、相手に伝えること」そして、「その人の考え方を知ること」が授業の重要な目的でした。

The Athenian Schoolでは、レポートを書く授業がとても多く、さらに、授業の8割は雑談スタイルでした。発言するチャンスも多く、自分が話しているときは周りが聞いています。当時シャイだった私は発言が苦手で、自分の番がくるととても緊張しました。しかし、そんな環境で授業を受けていくうちに、自然と発言が出来るようになりますし、先生が文法や発音なども都度訂正してくれるので、英語はどんどん上達していきました。何よりも書くこと、話すことを自分自身の言葉で表現できる力が身についていきます。この力は、グローバル社会を生きる中でとても大切な力だと思いますし、今の日本の学生に一番必要なことだと思います。

私も留学当初は、小学校4年生~中学校2年生までの日本での教育スタイルが染み付いていて、最初はThe Athenian Schoolの教育にギャップを感じ、戸惑うこともありましたが、慣れていくと、自分を表現できる北米の教育スタイルが自分には合っているように思いました。北米の教育は、「押さえつけない教育」、「間違ってもいいから自分で相手に伝える」方法で、生徒が自由に表現や主張し、一人ひとりの個性を引き出す教育です。「興味がある、自身がやりたいからやっている」という勉強スタイルですので、学生はみな積極的にのびのびと授業に参加します。そのような環境の中で、学生はお互いの個性を認め合い、自分の個性を伸ばしていける環境が北米の教育にはあります。

次回は、アメリカの大学進学についてお話いたします。

プロフィール
カナダ・バンクーバーで留学会社を経営しながら、
4歳と4カ月の2人の子育てをする母親です。中国人の母と日本人の父の間に生まれ、日本語、中国、そして英語のトリリンガル。中学2年生の時にアメリカに留学し、そのままアメリカで大学進学、就職しました。アメリカ留学での経験、海外での子育ての楽しいエピソードや困ったこと、日本との違いなど、現在私が経験していることもお伝えします。

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